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【現地レポート①】男子準々決勝 総評-ファイナルラウンド開幕‼ 第 1 日は男子ベスト4が決定-

「第95回天皇杯・第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンドが始まった。初日の 9 日は天皇杯 (男子) の準々決勝が行われ、明後日 (11日) に行われる準決勝に進出する4チームが決まった。

サンロッカーズ渋谷 (76-60 レバンガ北海道)
滋賀レイクスターズ (73-65 シーホース三河)
川崎ブレイブサンダース (69-66 アルバルク東京)
宇都宮ブレックス (74-65 富山グラウジーズ)

 天皇杯・皇后杯はいわゆる “一発勝負” である。トーナメント形式で行われるため、負ければ大会の幕を下ろさなければならない。負けても翌日に、もしくは次の週にはその負けを取り戻せるリーグ戦とは異なるため、独特の緊張感がある。

「出だしだよね……第 1 クォーターと第 3 クォーターの入り方がよくなかった。このレベルで10点差をつけられてしまうと、なかなか追いつけないよ。そう思って早め早めにタイムアウトを取ったんだけれどね……」
 そう振り返るのはレバンガ北海道の内海知秀ヘッドコーチだ。内海ヘッドコーチはかつて、JX-ENEOSサンフラワーズを率いて、何度も皇后杯を手中にした。そんな名将が北海道のヘッドコーチとしては初めて天皇杯ファイナルラウンドに臨んだのである。
 チームは準々決勝で敗れたが、2 次ラウンドで千葉ジェッツを破っている。昨年まで天皇杯を 3 連覇していた、あの千葉である。「千葉に勝ってこのステージ (ファイナルラウンド) に来たことはプラスです」と内海ヘッドコーチも認めている。
「今日のゲームでも点差をつけられたあとに戻せるようにはなってきました。以前であればずるずると離されていたと思うけど、“戻す力” はついてきたように思います。あとは勝ちきる力をつけていくことですよね」
 何度も勝ってきたヘッドコーチであっても、天皇杯のファイナルラウンドに立って気づくこともあったようだ。

「みんな、普段のリーグ戦とは異なる雰囲気に緊張していたと思います。僕も緊張していましたから」
そう振り返るのは、チームとして初めて天皇杯ファイナルラウンドのコートに立った滋賀レイクスターズのキャプテン、狩野祐介である。狩野はゲームの序盤にチームを勢いづかせる 3 ポイントシュートを立て続けに決めた。ボールを受けたら常にシュートを狙っているんです――そう明かす彼自身がその 2 本で緊張感から解き放たれた。
「天皇杯は “一発勝負” ですが、それだけに自分たちにも勝つチャンスはあると思っていました。だから楽しんでやろうとみんなで話していました。僕たちは自分たちが強いとは思っていません。むしろ今日のゲームで言えばシーホース三河のほうがタレントもそろっていて、強いと思っていました。でも僕たちはチャレンジャーとして自信を持って戦っています」
 “一発勝負” のおもしろさに魅せられ、自信を持って挑んでくるチャレンジャーほど怖いものはない。

 “一発勝負” のおもしろさに惹かれているのは狩野だけではない。滋賀と同じく天皇杯ファイナルラウンドに初めて臨んだ富山の水戸健史もまた、「一発勝負には現時点でリーグ戦の上位に位置する相手にも勝つチャンスがある。そういうおもしろさがありますよね」と言っている。
 チームは宇都宮ブレックスに敗れたが、大会終了直後にすぐ再開するリーグ戦に向けて収穫もあったと明かす。
「宇都 (直輝) がケガをして戦線を離れ、(ジョシュア・) スミスもいないなかで『富山はどんなバスケットをするんだろう?』と思われていたと思います。そこで自分たちがやらなければいけないバスケットを確立するように練習をしてきて、それを今日のゲームを通じで経験できたことは、次につがなる収穫だと思います」
 水戸自身は決していいパフォーマンスができていたわけではないと言う。しかし、チームとしてやるべきことが見えてきた。それは水戸自身にとっても収穫と言える。
 “負けたら終わり” の天皇杯だが、負けても収穫を得られるところに、天皇杯の素晴らしさはある。

 もちろん勝ったチームにも収穫はある。
 アルバルク東京との激戦を逆転で制した川崎ブレイブサンダースの辻直人が、準決勝に向けてこんなことを言っている。
「いいときのイメージを残すことが大切だと思います。今日であれば後半のオフェンスとディフェンス。それをA東京に対してもできたことは自信を持っていい。しかも逆転で勝った勢いがあります。天皇杯のときによく言っているんです。『勢いに乗ったもん (者) 勝ち』だって。明日は試合こそありませんが、ミーティングはすると思うので、そのことをみんなに伝えて、次につなげたいです」
 執拗なマークになかなかシュートを打たせてもらえなかった辻だが、それでも後半、大事な場面で 3 ポイントシュートを沈めている。

「40分で考えればいい」

 試合前、ケガのため今大会に出場ができない篠山竜青からそう言われていたことを辻は明かす。もし前半からA東京の厳しいディフェンスを受けて自分たちのパフォーマンスができなくても、ハーフタイムで切り替えれば後半で勝つチャンスは十分にある。辻自身もその言葉を心に留め、たった 1 本の 3 ポイントシュートでチームに勢いをもたらしたのだ。

 “一発勝負” のなかにもさまざまなストーリーは詰まっている。

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