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【現地レポート②】女子準々決勝 総評 ‐女子ベスト 4 決定 !! –

「第95回天皇杯・第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンドは大会2日目を終え、皇后杯 (女子) の準決勝に進出する 4 チームが決まった。

デンソー アイリス (74-49 vs. 山梨クィーンビーズ)
三菱電機 コアラーズ (52-50 vs. 日立ハイテククーガーズ)
トヨタ自動車 アンテロープス (87-69 vs. トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
JX-ENEOSサンフラワーズ (75-41 vs. アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)

 結果だけを見れば、三菱電機を除いた 3 チームが前回大会でも準決勝に進んだ、いわば皇后杯の “常連” である。
 それでも初戦の入り方は難しいようだ。

 25点差で山梨を下したデンソーも立ち上がりから硬さが見られた。
 いつもなら決めているはずのシュートをことごとく外し、リズムよくゲームを運べなかった。

「毎年、初戦はこんな感じかな」

 そう振り返る髙田真希もまた、最初のシュートを落としている。決して難しいシュートではなかった。ディフェンスがプレッシャーをかけてきたわけでもない。それでも外してしまうのが皇后杯の初戦というわけである。
 結果的に髙田は両チームトップの17得点をあげ、2 ポイントシュートの確率も11本中 7 本 (63%) と悪くはない。それでも本人が「硬くなったかな」と言うのだから、本来の髙田であればどんなゲームになっていたのか。
 身長で劣る相手がダブルチームを仕掛けてくることもわかっていた。それでもうまく対応できなかったと髙田は認める。

「修正して明日のゲームに臨むことが大事だと思っています。実際、今日の後半でも感覚がつかめてきましたし…」

 この “つかめてきた” という感覚が明日以降の勝敗を分けることになるのだろうか。

 6 年ぶりに皇后杯・準決勝の扉を開けた三菱電機は最後までリズムをつかめなかった。いや、第 3 クォーターで一度自分たちのリズムをつかんでリードを広げたのだが、そこから失速し、延長戦にまでもつれ込んでしまった。

「いい勉強になりました」

 渡邉亜弥はそう振り返る。いつもであれば、たとえリードを広げても、最後まで “攻守において” 攻め続けるのだが、今日はリードを広げたことで安心してしまい、守りに入ったというのだ。これも皇后杯の持つ独特の空気なのかもしれない。

 それでも最後は渡邉が冷静な判断で決勝点を演出した。
 50-50の同点で残り12秒。タイムアウトを取った三菱電機は最後のオフェンスをデザインしたが、それを聞きながら渡邊自身はこんなことを考えていたと言う。

「同点だし、苦しいシュートを打つくらいならダブルオーバータイムになってもいいから12秒を使いきろう」

 果たしてデザインされたオフェンスは遂行できなかったが、再び渡邊にボールが戻ってきたときに、ゴール下へ飛び込んでくる小菅由香の姿が見えた。

 それまでの渡邉は 3 ポイントシュートを 3 本打ってすべて外している。2 ポイントシュートも18本打って 5 本しか決められていない。得点力の高さでチームを引っ張る渡邉であれば、そこで冷静さを失っていてもおかしくはなかった。
 しかし彼女はそれを失っていなかった。
 そんな勝ち方もある。

 皇后杯で勝つことの難しさに飲み込まれた選手もいる。トヨタ紡織の東藤なな子である。昨春、高校を卒業したルーキーは、当然のことだが、皇后杯に出場するのは初めて。
「悔しいです。自分のプレーもできなくて、不完全燃焼です」
 試合後、彼女はそう振り返っている。

 相手は W リーグでも 1、2 を争うタレント集団、トヨタ自動車だ。守られたとしても決しておかしくはない。
 しかし彼女の言う「不完全燃焼」は、自分のプレーを守られたからの言葉ではない。得点が伸びなかったからでもない。前半で 4 つのファウルを犯した東藤は、以降、彼女が持つダイナミックな動きをほとんど見せられなかった。それを言っているのだ。

「皇后杯はリーグ戦と違って、一発勝負のトーナメントなので一瞬一瞬に力を出し切らないと取り戻すことができません。練習からもっと一つひとつのプレーを大切にして、プレーしながら修正する力をつけていきたいと思います。今はまだ自分のやることにしか視野を保てていないので、チームの流れとか、プレーの流れを察知していく力もつけていきたい」

 10代で挑む最初で最後の皇后杯は苦いものになったが、その苦みが東藤を大人のプレーヤーへと誘っていく。

 目下、皇后杯 6 連覇中のJX-ENEOSも常に順風を受けて女王の座にたどり着いたのではない。
 連覇の数字からもわかるとおり、7 年前には一度、トヨタ自動車に敗れている。
 負ける苦さを知っているからこそ、準々決勝ではアイシン・エィ・ダブリュを圧倒したが、JX-ENEOSの選手たちが気を緩めることはない。

「ゲームの入りでシュートが入らなかったところは修正しなければいけません。そこを修正すれば、もっといいゲームができると思います」

 キャプテンの岡本彩也花はゲームをそう振り返った。
 明日の準決勝では 7 年前に敗れたトヨタ自動車と対戦する。今シーズンはまだリーグ戦でも対戦していない。しかもヘッドコーチはスペイン代表のヘッドコーチであるルーカス・モンデーロだ。何を仕掛けてくるか、わからない。

「受け身にならないように、自分たちから向かっていくことが大事だと思っています。オフェンスでもディフェンスでも攻める。隙なく攻めたいと思います。確かにリーグでも対戦していないし、何をしてくるか想像もできません。きっと私たちのバスケットに対応してくるでしょう。でも私たちもゲームのなかでしっかり対応していきたいと思います」

 ひとつの杯 (カップ) を手に入れるために、選手たちは刻一刻と変わりゆく状況とも戦っている。

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